レビュー:ラッセル 幸福論【哲学】
- 作者: B.ラッセル,安藤貞雄
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1991/03/18
- メディア: 文庫
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不幸の原因(バイロン風の不幸、競争、退屈と興奮、疲れ、ねたみ、罪の意識、被害妄想)と幸福をもらたらすもの(熱意、愛情、家族、仕事、私心のない興味、努力とあきらめ)を考え、情熱と興味を外へ向けることで幸福をつかめるだろうと考える、のが著者ラッセルの主張でした。
本書は「三大幸福論」と言われる、ヒルティの『幸福論』(1891年)、アランの『幸福論』(1925年)、ラッセルの『幸福論』(1930年)の一つで以前に読んだ「7日間で突然頭がよくなる本」で紹介されていて興味を持ったので読みました。
内容は、××をすれば不幸になるや○○をすれば幸福になるということの紹介ではありませんでした。
不幸においては、日常的な行動や心理状況から知らず知らず、自分の視野が狭くなってしまいもったいないというような共感のできる示唆を与えてくれました。幸福においては、仕事や家族などあらゆるものと接する際の姿勢に対して示唆を与えてくれました。また、世界、宇宙、地球という存在は大きく、良い意味でその世界に包まれている自分はとてもちっぽけな存在であると教えてくれました。
非常に読みやすく気づきの多い本でした。
以下、まとめです。
■不幸の原因より
恋愛について
- 恋愛は、歓喜の源として高く評価されなければならない
競争について
- 成功は幸福の一つの要素でしかないので、成功を得るために他の要素がすべて犠牲にされたとすれば、あまりにも高い代価を支払ったことになる
退屈と興奮について
- 退屈の反対は快楽ではなく、興奮である
- 多すぎる興奮は健康をむしばむばかりではない、あらゆる種類の快楽に対する味覚をにぶらせ、深い全身的な満足をくすぐりで置き換え、英知を小利口さで、美をどぎつい驚きで置き換えてしまう
- 多少とも単調な生活に耐える能力は、幼少時代に獲得されるべきものである
- 私たちを<大地>の生と接触させるような快楽は、その中に深い満足を与えるものを持っている
働き方について
- 自分の環境とどうもしっくりいかないと思う若い人たちは、職業を選択するにあたっては、可能な場合はいつでも、気心の合った仲間が得られるチャンスのある仕事を選ぶように努めなければならない
幸福について
- 幸福は同じような趣味と、同じような意見を持った人たちとの交際によって増進される
- 他人に害を及ぼさない楽しみは、どんなものでも尊重されるべきである
- イチゴが好きな人は、きらいな人の知らない快楽を知っている。その限りにおいて、前者の人生のほうが楽しいし、また、前者のほうが、両者が暮さなければならない世界によりよく適応していることになる。
- 熱意こそは、幸福と健康の秘訣である
愛情について
- 熱意の欠如の主な原因の一つは、自分は愛されていないという感情である
- 安心感をいだいて人生に立ち向かう人は、不安感をいだいて立ち向かう人よりも、格段に幸福である
- 最上のタイプの愛情は、相互に生命を与えあうものだ
家族について
- 人間性を考察するとき、親になることは、心理的には、人生が提供する、最大かつ最も長続きする幸福を与えうるものであることは明らかだと思われる
- 親であることは人生の一要素として重要ではあるけれども、人生の全体であるこのように扱われるならば、不満足なものになる
仕事について
- 仕事をおもしろくする主な要素は、二つある。一つは技術を行使すること、もう一つは建設である
- 自尊心がなければ、真の幸福はまず不可能である
幸福な人について
- 幸福な人は幸福な信条をいだく